木曽三川プロジェクト

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田原町の家

施主Kちゃんはわたしの川あそびの友人だ。ふらりと事務所を訪ねてきて家を建てるという。渥美半島の田原町に土地を買ったとのこと。ちょっと笑えてきた。サーファーの彼が渥美半島に土地を買うということがあまりにシンプルで、魂胆がみえみえだからだ。現在は3児の父親でそうはいかないのだろうが、独身の頃は波を求めて、仕事の休みという休みは全国あちこち飛び廻っていたようだ。

私への注文の仕方が強烈だ。以下私とKちゃんとのやりとり。

「建売やメーカーのものも見たんだけどなんか気に入らないんだよね~値段もそこそこするしね~。あんまりお金がないけど、設計監理料はちゃんと払うからやってくれんかな~。ボクはサーファーだから何処でも寝られるし、暑いの寒いのは言わないし、細かい注文もないから。」 K
「そうは言っても、奥さんもこどももおるしキッチンはこうしたいとか、お風呂場はこうしたいとか、こども部屋はどうだとかいろいろ、いろいろあるんじゃないの?最近はネットで中途半端な情報もみんなもってるし、普通は聞けば聞くほどいろいろでてくるよ。」私
「カミサンはそんなに細かい注文ないっていっとったよ~」 K
私もわるのりして、
「でも、便所や風呂くらいはないとあかんやろ?」私
「うーん、便所や風呂くらいはいるな~」 K
そんなのんきなやり取りからこのプロジェクトは始まった。
設計者として目標としたのは、次のようなことである。

1 「暑いの寒いの言わない」とはいっても、住宅の基本性能をないがしろにしては、単なる安普請の家になってしまう。予算は限られていても基本性能は落とさない。
2 70坪もある土地である。狭小敷地でコンパクトに住もうという都市住宅ではない。5人家族のために如何に大きなボリュームを確保するか。
3 「細かい注文はない。」と言う Kちゃんは、いっぽうで、お手軽な建売やメーカー住宅は嫌だという大きな注文・決断をすでに終えている。この注文にしっかり答えなければいけない。

結論はこうだ。「 Kちゃん、壁をつくる予算はないから、屋根だけの家で住んで!」
「一切の注文はない!」と豪語していた Kちゃんは、何本も所有しているサーフボードの室内持込を奥さんに拒否され、ボードのメンテナンスを兼ねた屋外倉庫をバツわるそうに注文し、屋根の家で楽しげに暮らし始めた。

設計者 大久手計画工房 佐々木敏彦
木曽三川プロジェクト
SLOWHOUSE

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暮らしを楽しむ家づくり
定価(本体880円+税)

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